美咲シリーズ– category –
27歳の美咲と仲間たちの物語。全10話。
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第7話|葵が、ぽつりと言った日
夏のはじめの、いちばん長い、夕方だった。 葵の部屋は、西向きで、夕方になると、リビングが、オレンジ色に、染まる。 カーテンを開けると、部屋ぜんたいが、たまご色の光に、満たされる。 窓を開けると、目黒川沿いを散歩する人の声が、遠く近く、聞こえ... -
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第8話|山手線で、誰かのうしろ姿
⚠️ この回は、性暴力被害の体験を含みます。読むのがつらい方は、無理せず、別の話を選んでください。 10月の月曜日の朝、空気は、もう完全に、秋だった。 家を出るとき、薄手のニットの上に、すこし迷ってから、トレンチコートを、羽織った... -
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第9話|マッチングアプリの、優しい彼
12月、年末の慌ただしい時期だった。 仕事の納会、忘年会、年賀状、来年度の予算書、健太のクリスマスのプレゼントを何にするか、あと、年賀状って、もう書く意味あるのか。 頭のなかが、いろんなToDoで、ぱんぱんに、膨れ上がっていた、そんな金曜の夜。 ... -
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第10話|中野駅前の、夜風
3月、年度末。 仕事は、地獄みたいに、忙しかった。 担当しているクライアントの新商品ローンチが4月にあって、12月から3月にかけて、わたしの平日は、ぜんぶ、その案件で、塗りつぶされていた。 朝7時に家を出て、22時に会社を出て、ターミナル駅で、ラー... -
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第4話|リサ夫婦の、ブライダルチェック
5月のある土曜の午後、表参道で、リサと、久しぶりに、お茶をした。 ヒルズ裏の小道にある、店内が暗めの、昔ながらの喫茶店。 リサが指定してきたお店で、わたしは、初めて入った。 木の重たい扉を押し開けると、コーヒーの濃い匂いと、どこか古い革の匂... -
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第5話|「もしも」の二つの選択
雨の日曜日だった。 朝から、東京には、柔らかい雨が、降り続いていた。 アスファルトの匂いが、いつもより、ちょっと、近く、立ちのぼっている。 そういう日は、誰かと、ふたりで、何もせずに、過ごすのが、いちばんいい。 葵の部屋は、中目黒のマンショ... -
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第6話|金曜の夜、駅前のホテル街で
⚠️ この回は、性的境界の侵害についての描写を含みます。読むのがつらい方は、ご無理なさらず。 会社の同期、翔太から、電話が、来たのは、深夜の0時すぎだった。 ベッドのなかで、ぼうっと、Spotifyの就寝前プレイリストを、聞いていたわた... -
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第1話|初めての、よりそうろうオフィス
恵比寿駅西口のロータリーを背に、ガード下のほうへ二本入っていったところに、葵がよく連れて行ってくれる小さな居酒屋がある。 入口の暖簾はもう色がだいぶ抜けていて、木の引き戸を開けると、油の匂いと、出汁の匂いと、知らないおじさんたちの低い笑い... -
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第2話|オフィスのトイレで、ゆいが泣いた日
火曜の昼すぎ。 会社のデスクで、企画書のレイアウトを直していると、スマホの画面が、ちかちか、光った。 ゆい:「美咲、いまどこ?」 ゆい:「会社のトイレで動けない」 短い文章だった。 短いから、その文章のうしろにある「もう打つ気力もない」という... -
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第3話|深夜2時、ドラッグストアで
健太の部屋に着いたのは、夜の9時だった。 初台のワンルーム。 壁の半分が本棚で、残りはモニターとデスク。 彼が一人暮らしを始めた頃から、ほとんど変わらない、シンプルな部屋。 窓を開けると、首都高の遠い走行音と、近くの電車の音が、低くまじって、...
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