第2章|月経と性周期

目次

はじめに

月経(生理)は女性のからだに毎月起こる自然な現象であり、健康のバロメーターでもあります。しかし、痛みや量、周期の悩みは多く、「我慢するもの」と考えられがちでした。月経痛で日常生活に支障が出るなら治療対象であり、低用量ピル・LEP・IUSなど効果的な選択肢があります。本記事では、月経の正しい知識とトラブルへの対処法を解説します。


1. 月経とは

月経とは、妊娠が成立しなかったときに、子宮内膜が剥がれて血液とともに腟から排出される現象です。

月経の正常範囲(日本産科婦人科学会)

項目 正常範囲
周期 25〜38日
持続日数 3〜7日
経血量 20〜140 ml
初経年齢 平均12歳前後(10〜14歳が一般的)
閉経年齢 平均50歳前後(45〜55歳が一般的)

これらから外れる場合は月経異常として受診を検討。


2. 月経周期のホルモン変化(4つのフェーズ)

① 月経期(1〜7日目)

  • エストロゲン・プロゲステロンが最低
  • 子宮内膜が剥がれ落ちる
  • だるさ・腹痛・気分の落ち込みが出やすい

② 卵胞期(〜14日目)

  • エストロゲンが増加
  • 卵巣の中で卵胞が育つ
  • 心身が安定し、肌の調子がよい時期
  • 気分が前向きになりやすい

③ 排卵期(14日目前後)

  • LHサージで成熟卵胞から卵子が排出される
  • 受精可能期間(卵子は約24時間、精子は3〜5日生存可)
  • おりものが増え、伸びるような透明感(頸管粘液の変化)に
  • 一部の人は排卵痛を感じる

④ 黄体期(〜28日目)

  • プロゲステロンが優位に
  • 子宮内膜が厚くなり受精卵を待つ
  • 妊娠しなければ黄体退縮し月経へ
  • PMS(月経前症候群)が出やすい時期
  • 基礎体温が0.3〜0.5℃高温になる

3. PMS(月経前症候群)

月経の3〜10日前から始まる心身の不調。月経が始まると軽快するのが特徴です。

有病率

  • 月経のある女性の70〜80%が何らかの症状を経験
  • 日常に支障が出るレベルは約5〜10%

よくある症状

  • 身体症状:頭痛・腹痛・乳房の張り・むくみ・便秘・肌荒れ・倦怠感
  • 精神症状:イライラ・抑うつ・集中力低下・眠気・感情の波

セルフケア

  • カフェイン・塩分・アルコールを控える
  • 軽い運動(ヨガ・ウォーキング)
  • 鉄分・マグネシウム・ビタミンB6・カルシウムを含む食品
  • 睡眠を十分にとる
  • 喫煙はPMSを悪化させる

治療

  • 軽症:セルフケア+漢方薬
  • 中等症以上:低用量ピル/LEPで症状改善が期待できる
  • SSRIなどの抗うつ薬が有効な場合も

PMDD(月経前不快気分障害)

  • PMSの精神症状が重く、日常生活に支障を来すもの
  • うつ病・双極性障害との鑑別が必要
  • 婦人科+心療内科で治療を

4. 月経のトラブル

月経困難症(生理痛)

強い痛みで生活に支障が出る状態。日本人女性の約25%が月経困難症を経験するとされる。

#### 機能性月経困難症

  • 子宮自体に病気はないが痛みが強い
  • 原因:プロスタグランジン過剰による子宮収縮
  • 思春期〜20代に多い
  • 鎮痛薬(NSAIDs:イブプロフェン・ロキソプロフェン等)を痛みが出る前から服用するのが効果的

#### 器質性月経困難症

  • 子宮の病気が原因
  • 子宮内膜症:他の場所に内膜組織が増殖。不妊の原因にも
  • 子宮腺筋症:子宮筋層内に内膜組織
  • 子宮筋腫:子宮の良性腫瘍
  • 30代以降に多いが、若年でもあり得る
  • 治療:LEP・GnRHアナログ・ジエノゲスト・IUS(ミレーナ)・手術

月経不順

  • 周期が25日未満(頻発月経)または39日以上(希発月経
  • ストレス・過度なダイエット・PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)・甲状腺異常など
  • 3か月以上来ない場合は続発性無月経として受診を

過多月経

  • 経血量が多すぎる(夜用ナプキンが1時間で満たされる、レバー状の塊が多い)
  • 貧血の原因になる
  • 子宮筋腫・腺筋症・ホルモン異常などが原因のことも
  • IUS(ミレーナ)が保険適用治療として有効

過少月経・無月経

  • 経血量が極めて少ない/全くない
  • 続発性無月経:3か月以上停止
  • 体重減少・摂食障害・過度な運動・ストレス・薬剤・更年期早発症など
  • 必ず婦人科を受診

5. 月経用品の選び方

種類 特徴 交換頻度
ナプキン 最も一般的、使い捨て 2〜3時間ごと
タンポン 腟内に挿入、活動的に過ごせる 4〜8時間ごと
月経カップ シリコン製、繰り返し使用可 8〜12時間
月経ディスク 子宮頸部にフィット、長時間OK/装着中の性行為も可 〜12時間
吸水ショーツ 下着型、洗って繰り返し使用 1日1〜2枚
布ナプキン 環境に優しい/洗濯の手間 個人差

⚠️ TSS(毒素性ショック症候群):タンポン・月経カップを長時間放置すると黄色ブドウ球菌の毒素によりショックを起こす可能性。使用上限時間を必ず守る。発熱・嘔吐・発疹が出たらすぐ抜去し医療機関へ。

生理の貧困

  • 経済的理由で月経用品が買えない問題
  • 多くの自治体で無償配布・公共施設での提供が始まっている

6. 月経との付き合い方

記録をつける

  • 周期・量・痛み・気分を記録するアプリ(ルナルナ、ケアミーなど)
  • 不調の早期発見、受診時の説明に役立つ
  • 妊活・避妊計画にも使える

低用量ピル/LEP・IUSという選択肢

  • OC(経口避妊薬):避妊目的+月経改善
  • LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬):月経困難症治療として保険適用
  • IUS(ミレーナ):月経過多・月経困難症で保険適用、5年間有効
  • 月経痛軽減・月経量減少・周期コントロール
  • PMS緩和・肌荒れ改善・卵巣がん/子宮体がんリスク低減効果も
  • 婦人科で処方/装着

月経移動

  • 旅行・受験・スポーツなどで月経時期を調整したい場合
  • ホルモン剤で前倒し/遅らせる
  • 婦人科で計画的に処方

7. 男性も知っておきたい月経の知識

  • 月経は「汚れたもの」ではなく、健康な身体のはたらき
  • 体調や気分の波は個人差が大きい
  • パートナーや家族として、無理を強いない・サポートする姿勢が大切
  • 月経用品の購入を頼まれることを恥ずかしがらない
  • PMS・月経困難症は治療できることを知る

8. 受診の目安

以下に当てはまる場合は婦人科受診を:

  • 月経痛で鎮痛薬が効かない/生活に支障
  • 経血量が多すぎる(貧血症状あり)
  • 3か月以上月経が来ない
  • 周期が25日未満/39日以上
  • 月経以外の出血(不正出血)がある
  • PMSで生活に支障
  • 18歳になっても初経がない(原発性無月経

関連記事

  • 01_性とからだの基礎知識.md
  • 03_避妊と家族計画.md
  • 05_妊娠・出産・中絶.md

相談窓口

  • 婦人科の悩み:日本産科婦人科学会 認定医療機関
  • 思春期の月経相談:日本家族計画協会
  • 月経の貧困:自治体の生活支援課・学校

参考・出典

  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編」
  • 日本産科婦人科学会用語集
  • 厚生労働省「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」
  • WHO「Adolescent menstrual health」
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第2章|月経と性周期

はじめに

月経(生理)は女性のからだに毎月起こる自然な現象であり、健康のバロメーターでもあります。しかし、痛みや量、周期の悩みは多く、「我慢するもの」と考えられがちでした。月経痛で日常生活に支障が出るなら治療対象であり、低用量ピル・LEP・IUSなど効果的な選択肢があります。本記事では、月経の正しい知識とトラブルへの対処法を解説します。


1. 月経とは

月経とは、妊娠が成立しなかったときに、子宮内膜が剥がれて血液とともに腟から排出される現象です。

月経の正常範囲(日本産科婦人科学会)

項目 正常範囲
周期 25〜38日
持続日数 3〜7日
経血量 20〜140 ml
初経年齢 平均12歳前後(10〜14歳が一般的)
閉経年齢 平均50歳前後(45〜55歳が一般的)

これらから外れる場合は月経異常として受診を検討。


2. 月経周期のホルモン変化(4つのフェーズ)

① 月経期(1〜7日目)

  • エストロゲン・プロゲステロンが最低
  • 子宮内膜が剥がれ落ちる
  • だるさ・腹痛・気分の落ち込みが出やすい

② 卵胞期(〜14日目)

  • エストロゲンが増加
  • 卵巣の中で卵胞が育つ
  • 心身が安定し、肌の調子がよい時期
  • 気分が前向きになりやすい

③ 排卵期(14日目前後)

  • LHサージで成熟卵胞から卵子が排出される
  • 受精可能期間(卵子は約24時間、精子は3〜5日生存可)
  • おりものが増え、伸びるような透明感(頸管粘液の変化)に
  • 一部の人は排卵痛を感じる

④ 黄体期(〜28日目)

  • プロゲステロンが優位に
  • 子宮内膜が厚くなり受精卵を待つ
  • 妊娠しなければ黄体退縮し月経へ
  • PMS(月経前症候群)が出やすい時期
  • 基礎体温が0.3〜0.5℃高温になる

3. PMS(月経前症候群)

月経の3〜10日前から始まる心身の不調。月経が始まると軽快するのが特徴です。

有病率

  • 月経のある女性の70〜80%が何らかの症状を経験
  • 日常に支障が出るレベルは約5〜10%

よくある症状

  • 身体症状:頭痛・腹痛・乳房の張り・むくみ・便秘・肌荒れ・倦怠感
  • 精神症状:イライラ・抑うつ・集中力低下・眠気・感情の波

セルフケア

  • カフェイン・塩分・アルコールを控える
  • 軽い運動(ヨガ・ウォーキング)
  • 鉄分・マグネシウム・ビタミンB6・カルシウムを含む食品
  • 睡眠を十分にとる
  • 喫煙はPMSを悪化させる

治療

  • 軽症:セルフケア+漢方薬
  • 中等症以上:低用量ピル/LEPで症状改善が期待できる
  • SSRIなどの抗うつ薬が有効な場合も

PMDD(月経前不快気分障害)

  • PMSの精神症状が重く、日常生活に支障を来すもの
  • うつ病・双極性障害との鑑別が必要
  • 婦人科+心療内科で治療を

4. 月経のトラブル

月経困難症(生理痛)

強い痛みで生活に支障が出る状態。日本人女性の約25%が月経困難症を経験するとされる。

#### 機能性月経困難症

  • 子宮自体に病気はないが痛みが強い
  • 原因:プロスタグランジン過剰による子宮収縮
  • 思春期〜20代に多い
  • 鎮痛薬(NSAIDs:イブプロフェン・ロキソプロフェン等)を痛みが出る前から服用するのが効果的

#### 器質性月経困難症

  • 子宮の病気が原因
  • 子宮内膜症:他の場所に内膜組織が増殖。不妊の原因にも
  • 子宮腺筋症:子宮筋層内に内膜組織
  • 子宮筋腫:子宮の良性腫瘍
  • 30代以降に多いが、若年でもあり得る
  • 治療:LEP・GnRHアナログ・ジエノゲスト・IUS(ミレーナ)・手術

月経不順

  • 周期が25日未満(頻発月経)または39日以上(希発月経
  • ストレス・過度なダイエット・PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)・甲状腺異常など
  • 3か月以上来ない場合は続発性無月経として受診を

過多月経

  • 経血量が多すぎる(夜用ナプキンが1時間で満たされる、レバー状の塊が多い)
  • 貧血の原因になる
  • 子宮筋腫・腺筋症・ホルモン異常などが原因のことも
  • IUS(ミレーナ)が保険適用治療として有効

過少月経・無月経

  • 経血量が極めて少ない/全くない
  • 続発性無月経:3か月以上停止
  • 体重減少・摂食障害・過度な運動・ストレス・薬剤・更年期早発症など
  • 必ず婦人科を受診

5. 月経用品の選び方

種類 特徴 交換頻度
ナプキン 最も一般的、使い捨て 2〜3時間ごと
タンポン 腟内に挿入、活動的に過ごせる 4〜8時間ごと
月経カップ シリコン製、繰り返し使用可 8〜12時間
月経ディスク 子宮頸部にフィット、長時間OK/装着中の性行為も可 〜12時間
吸水ショーツ 下着型、洗って繰り返し使用 1日1〜2枚
布ナプキン 環境に優しい/洗濯の手間 個人差

⚠️ TSS(毒素性ショック症候群):タンポン・月経カップを長時間放置すると黄色ブドウ球菌の毒素によりショックを起こす可能性。使用上限時間を必ず守る。発熱・嘔吐・発疹が出たらすぐ抜去し医療機関へ。

生理の貧困

  • 経済的理由で月経用品が買えない問題
  • 多くの自治体で無償配布・公共施設での提供が始まっている

6. 月経との付き合い方

記録をつける

  • 周期・量・痛み・気分を記録するアプリ(ルナルナ、ケアミーなど)
  • 不調の早期発見、受診時の説明に役立つ
  • 妊活・避妊計画にも使える

低用量ピル/LEP・IUSという選択肢

  • OC(経口避妊薬):避妊目的+月経改善
  • LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬):月経困難症治療として保険適用
  • IUS(ミレーナ):月経過多・月経困難症で保険適用、5年間有効
  • 月経痛軽減・月経量減少・周期コントロール
  • PMS緩和・肌荒れ改善・卵巣がん/子宮体がんリスク低減効果も
  • 婦人科で処方/装着

月経移動

  • 旅行・受験・スポーツなどで月経時期を調整したい場合
  • ホルモン剤で前倒し/遅らせる
  • 婦人科で計画的に処方

7. 男性も知っておきたい月経の知識

  • 月経は「汚れたもの」ではなく、健康な身体のはたらき
  • 体調や気分の波は個人差が大きい
  • パートナーや家族として、無理を強いない・サポートする姿勢が大切
  • 月経用品の購入を頼まれることを恥ずかしがらない
  • PMS・月経困難症は治療できることを知る

8. 受診の目安

以下に当てはまる場合は婦人科受診を:

  • 月経痛で鎮痛薬が効かない/生活に支障
  • 経血量が多すぎる(貧血症状あり)
  • 3か月以上月経が来ない
  • 周期が25日未満/39日以上
  • 月経以外の出血(不正出血)がある
  • PMSで生活に支障
  • 18歳になっても初経がない(原発性無月経

関連記事

  • 01_性とからだの基礎知識.md
  • 03_避妊と家族計画.md
  • 05_妊娠・出産・中絶.md

相談窓口

  • 婦人科の悩み:日本産科婦人科学会 認定医療機関
  • 思春期の月経相談:日本家族計画協会
  • 月経の貧困:自治体の生活支援課・学校

参考・出典

  • 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編」
  • 日本産科婦人科学会用語集
  • 厚生労働省「女性の健康推進室 ヘルスケアラボ」
  • WHO「Adolescent menstrual health」
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